はじめに
90年代ドラマの黄金期を思い出すとき、私の中で真っ先に浮かぶのが松たか子さん。
『ロングバケーション』『ラブジェネレーション』『HERO』・・どの作品でも、松たか子さんは“清楚で芯の強いヒロイン”を自然体で演じていました。
そんな松たか子さんが、2013年にディズニー映画『アナと雪の女王』でエルサ役を演じたとき、
「やっぱり彼女しかいない!」と感じた人は、私だけじゃないのではないでしょうか。
でも、一つだけ当時多くの人が疑問に思ったことがありました。
それは、なぜ松たか子さんは「Let It Go〜ありのままで〜」をテレビで歌わなかったのか?
確かに、松たか子さんが歌う姿を心待ちにしていたファンはきっと多かったのではないかと個人的にも思います。私もその一人です。
この記事では、その理由を探りながら、90年代ドラマで培われた松たか子さんの“女優としての信念”にまで迫ってみたいと思います。
松たか子が「アナ雪」の「Let It Go」を歌わなかった理由とは
ディズニーの厳格な役割分担
映画『アナ雪』の日本語吹替版では、松たか子さんがエルサ役として劇中で歌声を披露しました。
あの感情のこもった「ありのままで」は、まさに松たか子さんの声だからこそ心に響いたと思います。
一方で、映画のエンディングで流れる主題歌バージョンを歌っていたのはMay.Jさん。
つまり、映画内とエンディングで歌手が異なるのです。
これは実はディズニーの方針。
本編ではキャラクターとしての世界観を壊さないように「声優本人が歌唱」し、
一方でテレビやラジオで流れるポップソングは「アーティストとして別の歌手が歌う」という、
役割のすみ分けがしっかりと決められているのです。
私は、この事実を知ったとき、なるほど、と思いました。
日本だけでなく、アメリカ版でもエルサ役のイディナ・メンゼルと、
主題歌を歌うデミ・ロヴァートが別人です。
このことからも、松たか子さんがテレビで歌わなかったのは、単なる「選択」ではなく契約上の構造的な理由でもあるのです。
ディズニーはその辺、独特のものがありますね。
松たか子、女優としてのこだわりとプロ意識
ただ、それだけでは説明しきれない「松たか子らしさ」もあります。
松たか子さんは90年代からずっと、「作品に誠実であること」を大切にしてきました。
『ロングバケーション』の奥沢涼子も、『HERO』の雨宮検事も、どこか控えめで、でもブレない芯を持っている。
その姿勢は、エルサというキャラクターにも重なります。
松たか子さんにとって「Let It Go」は、“松たか子として歌う曲”ではなく、“エルサとして生きる歌”。なんだかそう捉えると個人的にはしっくりきます。
だからこそ、テレビの音楽番組で“自分”として歌うことには違和感があったのかもしれません。
ある意味、それは「歌わない」という強い意志の表れ。
“作品を壊さない”という、女優としての美学だと私は思います。
Let It Goは、技術的にも高難度な歌
実際、「Let It Go」はただの主題歌ではありません。
声の芝居と歌唱が一体化していて、感情表現も音域も非常に難しいですよね。
松たか子さんの歌唱力があってこそ完成した名シーンであり、あの迫力を生放送で再現するのは簡単ではなかったはずです。
だからこそ、松たか子さんは「テレビで見せるよりも、作品の中で完結させたい」と思ったのではないでしょうか。
それが、松たか子さんらしい“控えめな強さ”だと私は感じます。
May.Jへの誤解と比較から見える松たか子のプロ意識
当時、日本ではMay.Jさんがテレビで何度も主題歌を披露していたため、
「松たか子はなぜ歌わないの?」「May.Jが横取りした?」といった誤解が広がりました。
でも、実際はどちらもディズニーの正式なキャスティング。
松たか子は“映画の中でのエルサ”、May.Jは“アーティストとしての主題歌担当”。
このすみ分けを理解すれば、どちらも欠かせない存在だったことがわかります。
それでも批判が出たのは、やはり日本人が「声優=歌手」というイメージを持っていたからではないかと思います。
でも、松たか子さんはその枠を超え、“役として生きる”ことを選んだ。
私はそこに、松たか子さんの「本物のプロ意識」を感じます。
松たか子の90年代ドラマで見せた“芯の強さ”がエルサにつながる
思い返せば、90年代の松たか子さんはいつも“自分の生き方”を模索する女性を演じていました。
『ラブジェネレーション』では、恋に不器用だけどまっすぐで、
『HERO』では、正義感が強くてもどこか人間味のある検事。
そんな松たか子さんの役柄は、「ありのままで生きる」というエルサの姿と重なります。
つまり、エルサは松たか子さん自身がこれまで演じてきた女性像の集大成ともいえるような気がします。
私自身、90年代に松たか子さんのドラマを観て育った世代として、『アナ雪』の「ありのままで」を聴いた瞬間、懐かしい“あの頃の松たか子の強さ”が蘇るような気がしました。
松たか子がアナ雪という作品と自分を切り離す美学
松たか子さんはインタビューで「作品が完成した時点で、自分の役目は終わり」と語ったことがあります。
この言葉に、私は深くうなずきました。
松たか子さんにとって『アナ雪』は、自分の歌を売るための作品ではなく、“エルサという女性の心の物語”。
だから、完成後はエルサの世界を守るためにあえて沈黙したのだと私は思います。
この「一歩引く潔さ」こそ、松たか子さんが90年代から変わらず持ち続けている信念ではないでしょうか。
それが、松たか子さんが長く愛される理由なのだと私は感じます。
まとめ:松たか子の“ありのまま”の生き方
松たか子さんが『Let It Go』をテレビで歌わなかったのは、単なる事情ではなく、“信念”の選択でした。
作品に誠実でありたい——。
90年代ドラマの頃から変わらないその姿勢が、今もなお多くの人の心を動かしているのだと思います。
『アナ雪』の「ありのままで」は、実は松たか子さん自身がずっと歩んできた人生そのものなのではないでしょうか。
松たか子さんの“歌わない選択”こそが、まさに“ありのまま”の松たか子だったのかもしれません。
90年代ドラマから活躍してきた松たか子さん、いまとなってはエルサのイメージがとても強く印象に残っていますが、これらも幅広い役柄で楽しませてくれることに期待したいですね。

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